かぜとなれ

自分=職業を目指してもがく、ふざけた24歳の人生の道しるべ

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【俳優になるには】演出家が語る知っておきたい5つのこと

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「俳優になるにはオーディションを受けることが必要です。」

 

という暗黙の了解みたいなものが、本当にそうなのだろうか?と疑問に感じていた。必要だということはもちろん分かる。

 

ただ「俳優になる」ってどういうことなのか?どっからが俳優で、どっからが俳優じゃないのか?

 

そもそも、俳優になるにはオーディションを受けるだけでいいのだろうか?ということが引っかかってしょうがなかった。

 

今日はその疑問を自分の体験談を通して証明していく。

 

 

俳優になるということとは?

「俳優になる」の定義とは?

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そもそも「俳優になるという定義」って何なのだろうか?

 

メディアであるテレビ番組のドラマとか特番とかに出演すること?

 

プロデューサーやディレクターに気に入ってもらうこと?

 

映画に出ること?

 

舞台に出ること?

 

はたまた自主公演?

 

自称「俳優」って名乗ってれば俳優なの?

 

という風に、僕が暮らす日本という国では「俳優になるという定義」が曖昧な現状があると感じている。

 

今やどこでも引っ張りだこで売れている俳優もいれば、社会的に人気がそこまである訳ではないがニッチなところでは人気がある俳優もいる。

 

はたまた、全く売れずにバイトばっかりしている俳優もいれば、そもそも全然食えてないけど稽古や舞台に勤しむ俳優もいる。

 

他にも、社会に出て企業に務めて働きながら休日に趣味として演技をしている人もいる。

 

高校生から演技をしている人、大学生から演技をしている人、男の俳優、女の俳優、年齢の上限の有無とか、入り口が芸能事務所なのか・舞台なのか・映画なのか...

 

この「俳優になるという定義」には、明確な「これ!」という答えは存在しない。

 

「俳優になりたいあなたへ」という本に出逢って

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僕が“俳優を目指す”と決めた時、一番最初に読んだ本が「俳優になりたいあなたへ」という本だった。

 

 

この本は、日本劇作家協会理事であり、日本劇団協議会理事でもある鴻上尚史さんが2006年に出版された書籍である。

 

青森県八戸市で開かれた第21回高校演劇コンクールの全国大会の審査を終えた鴻上さんが、東京に向かう東北新幹線の中で男女2人の高校生(マサシ君とユキちゃん)に「私たち、どうやったら俳優になれるか知りたいんです!」と聞かれることから始まっていくドラマ調の一冊。

 

いっちょまえにこの本が僕にとってのバイブルで、俳優になると決めてから初めて読んだ本であり、「僕の俳優人生の最初の本でほんとによかった」と読み終えた時に感動した。

 

中でも一番最初の冒頭部分は、今後「俳優」という道を目指す人々にとって「俳優になる」ということがどういうことなのかの本質を考えさせられる。

 

1. 俳優になるには : テレビに出たいのか?俳優になりたいのか?

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 マサシ君は、下を向いたまま、小さく言いました。

「…だって、僕、舞台に興味ないんです。テレビとかがいいんです」

「また、あんたはそういうことを言う!演技の基本は舞台ですよねえ!鴻上先生、ちゃんとマサシに言ってください!」

ユキちゃんが全身で文句を言い出しました。

「まあまあ。落ち着いて。マサシ君はテレビに出たいの?それとも、俳優になりたいの?」

「えっ...」

マサシ君が意外そうな声を上げました。

「どっちなの?テレビに出たいなら、俳優じゃなくても、タレントや歌手やお笑いの人になるという方法があるよ。もちろん、それぞれに目指し方は違うけどね。どうなの?」

引用 : 俳優になりたいあなたへ p20~22

 

ここが多くの俳優を目指す人に送りたい部分。

 

「俳優になりたいのか」

「テレビに出たいのか」

 

という至ってシンプルだが、俳優とはどういうものなのかを考えるにはもってこいの質問。

 

それに対してマサシ君はこう答える。

 

「...テレビに出る俳優になりたいんです」

マサシ君がぽつりと言いました。

「なるほど。テレビだったらいつでもいいの?」

「いつでも?」

「そう、深夜でも早朝でも。深夜1時からのドラマでもいい?誰も見てないかもしれないんだけど、とにかくテレビだったらいいのかな?」

~~~~~~~~~~

「どう?お年寄りしか見ないドラマなんだけど、テレビの場合は、それでもいい?」

「...分かんないス」

マサシ君は淋しそうに言いました。

引用 : 俳優になりたいあなたへ p22〜23

 

ひとえにテレビに出ると言ったって、朝の番組、昼の番組、夜の番組と放送される時間帯も違えば、その時間帯や内容によっては視聴者の年齢層も異なってくる。

 

もちろん大体の人にとって“メディアに出演する”ということは、“ゴールデンタイムの番組に出る”と同意なのだろう。

 

2. 俳優になるには : 『人気者』と『俳優』

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「ちょっときつい言い方をするとね、『人気者』と『俳優』を取り間違えちゃいけないよってことなんだ」

「『人気者』と『俳優』ですか?」

マサシ君は、まっすぐに僕の目を見て、聞きました。

「そう。テレビに出て、『人気者』になりたいっていうことと、『俳優』になりたいってことは違うんだよ」

引用 : 俳優になりたいあなたへ p23〜24

 

まさにその通りだと思わされる一言。

 

無意識の内に、僕たちは知っている情報から“当たり前”を創り出している。

 

子どもの頃から、メディアに取り上げられている『俳優』という名の『人気者』を見てきていれば、『俳優になりたい!』というものが『人気者になりたい!』と同義になってしまうのは、至極当然のことでもある。

 

ただ、そのあと鴻上さんはこう述べている。

 

「...すみませんでした」

横でマサシ君が悲しそうな声を出しました。

「どうしてあやまるの?『俳優』になりたい動機が、『人気者』になりたいってことなのは、ふつうのことだよ。僕だってもてたいと思ったから、作家とか演出家を目指したんだから」

「ほんとですかあ!?」

初めてマサシ君が大きな声を出していました。

「本当さ。もてたいから俳優になりたい。人気者になりたいから俳優になりたい。きれいな服が着られるから、おシャレできるから、いろんな場所に旅行に行けるから、お金がかせげるから、いい女・いい男をとっかえひっかえできるから、だから俳優になりたい。そう思うのは、当然のことさ。俳優になりたい動機として、少しも間違ってない」

引用 : 俳優になりたいあなたへ p24〜25

 

鴻上さんも「もてたい」と思ったのが作家や演出家を目指すキッカケだったと言う。

 

人によって「俳優になりたい!」と思ったキッカケが違う訳で。もちろん、「なぜ俳優になりたいのか?」という目的も人によっては異なる。

 

そして、ユキちゃんはこう答える。

 

「私は違います」

ユキちゃんが、きっぱりと言いました。

「私は、なんていうか...お話が好きなんです。いろんなお話が好きで、いろんなキャラクターになるのが好きで...だから俳優になりたいんです」

引用 : 俳優になりたいあなたへ p25

 

僕にも俳優になりたいと思ったキッカケや理由はたくさんある。

 

ユキちゃんのこの理由は自分のものと少し近い。

 

僕は、俳優を通して、「何人もの人生を体験してみたい」と思ったのだ。

 

演じる役によって、生い立ちや性格、人付き合いや環境、未来などその全てが自分と同じ人なんていない。そこに一番の魅力を感じたのだ。

 

その後、鴻上さんはこう述べる。

 

「うん。それも分かる。それも、ふつうの動機だ。その話もこれからする。でも、ここで大事なことはね、『人気者』になりたいという動機だけでは、『俳優』にはなれないってことなんだ。『俳優』が結果的に『人気者』になるかもしれない。でも、『人気者』が結果的に『俳優』になることはないんだ」

引用 : 俳優になりたいあなたへ p25〜26

 

これも考えてみれば当然のことである。

 

『人気者を目指すのか』

『俳優を目指すのか』

 

その目指す方向性によって、その人の俳優人生も決まるのだろう。

 

もちろん、その課程には、テレビなのか、声優なのか、映画なのか、ラジオなのか、ネットシネマやウェブドラマ、舞台やCMなど、その活躍の舞台も異なってくる。

 

ましてや、演技とは何なのか?という問いや、台本を読んだり、理解したり、暗記したりする力、役作り、体調管理、他の俳優やプロデューサーなどとのコミュニケーションなど、やるべきこともたくさんある。

 

3. 俳優になるには : 「確実に俳優になれる道」というものはない

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マサシ君が、ふと、箸を止めて聞きました。

「...テレビに出られる俳優になるためには、僕はどこに行けばいいんでしょう?」

「なに、その言い方?家出したヤツみたいよ」

横でユキちゃんが箸で玉子焼きをつまんだまま言いました。

「なるほど。そうだ、そのことを語る番だよね。じつは、その問題が、一番、やっかいなんだ。この道を通ったら、絶対に俳優になれるという道は、ない。」

「ないんですか!?」

マサシ君が悲鳴のように言いました。

「残念ながら、ない。もっとも、他の職業だって、絶対ってことはないと思う。その職業の専門学校に入っても、落第することはあるだろうからね。調理専門学校に入ったからといって、絶対に調理師さんになれるわけじゃないだろう。でも、俳優の場合は、他の職業に比べて、なれる可能性が、とても低い。」

引用 : 俳優になりたいあなたへ p100

 

これも至極当然のことである。

 

例え誰がどんな道を目指そうとも、確実に絶対になれるという道はないし、その保証もない。いわゆる茨の道だ。

 

中にはその道に進むことを応援してくれる人もいれば、「無理だからやめておけ」という人もいるだろう。

 

まさに俳優の道なんかは特にそういうもので、芸能事務所のオーディションがあったり、映画のオーディションなんかも一般公募があったり、養成所に通ったり、スカウトされたり、劇団に所属したり、演技の専門学校に通ったり、はたまた自分で劇団を作ってしまったり...

 

テレビに出られる俳優になるには色んな道があるし、テレビ以外の役者になるためにもその道は一律ではないし、先行きの見えない暗闇を進むようなものだ。

 

4. 俳優になるには : 俳優は失業を前提とした職業

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「君がラッキーにも事務所に所属できたとする。そして、最初の仕事をしたとする。君は、間違いなく興奮して、もう自分はプロの俳優になったと感激するだろう。だが、そこから、本当の苦しみは始まる。その苦しみに比べたら、デビューまでの苦しみなんて、じつはたいしたことがなかったと感じるぐらいの苦しみだ」

マサシ君が、ちょっと怯えた目で見ました。

「君は、最初の仕事を終えた後、すぐに失業する。失業して、膨大な時間を持て余す。失業期間は、1週間かもしれない、1ヶ月かもしれない、1年kもしれない。恐ろしいことに、失業期間はどれぐらい続くか、君には分からない。

普通の失業だと、君は、自分で失業期間をある程度縮めることができる。不本意だけどまったく違う仕事につくとか、自分から売り込みにいくとか、けれど、俳優の失業の場合は、声がかかるまで、待つしかない。不本意な仕事もなにも、君は俳優の仕事だけを待っている。だからひょっとすると失業は延々と続く」

~~~~~~~~~~

「俳優という職業は、基本的にそういうものだということを分かっておいてほしいんだ。俳優は失業を前提とした職業なんだ」

引用 : 俳優になりたいあなたへ p151〜152

 

「いざ、これから俳優の道を目指そう!」と意気込んだ自分でさえも、ここで少し後ずさりしたのは言うまでもない。

 

例えどんなキッカケや、なりたい理由があったとしても、現実は厳しいということをしっかりと伝えてくれている。

 

以下のグラフは、本書に記載されている芸団協(日本芸能実演家団体協議会)の2005年度の調査をグラフ化したものである。

 

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この調査の回答者の平均年齢は、48.09歳。

 

演劇関係の協会組織に所属している人たちを対象としたものであるため、どこにも所属していない若手が入ると、100万円〜300万円未満の方に数字は偏るだろう。

 

この事実から分かることは、50歳の俳優の6割が月収20万円ちょっとしか収入がないということ。それでも稼いでる方に分類されるということ。

 

もちろん、中には豪邸を立てたり、俳優だけで生計を立てられている人もいるが、それは本当に極少数ということなのだ。

 

5. 俳優になるには : 俳優になりたい動機が、その俳優の水準を決める

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「さあ、ここで、もう一回、どうして俳優になりたいのかを思い出してほしいんだ。俳優になりたい動機はなんでもいいって僕は言ったね。人気者になりたいという動機でもいいんだって。でもね、それは始まりはなんでもいいという意味なんだ。

なぜなら、『俳優になりたい動機が、その俳優の水準を決める』からなんだ。ただ人気者になりたいだけの俳優が与える感動は、それだけのものなんだ。もてたいだけで俳優になった人のくれる感動は、それだけの感動なんだ。マサシ君は、もし、人気者になったら、それでもう、終わりかな?」

~~~~~~~~~~

「人気者になって、女の子にうんともてるようになるのがゴールかな?もし、そのゴールにたどりついたら、もう、俳優をやる気はなくなるかな?」

引用 : 俳優になりたいあなたへ p162

 

この後、高校生2人と鴻上さんを乗せた新幹線は、東京に到着する。

 

僕も、夢見る全ての俳優たちに伝えたい。

 

険しい道だからこそ、人生を棒にするかもしれない職業だからこそ、挑戦をし続けるのが大事なんだと。

 

また、俳優になるということがあなたにとってどういうことなのかということを。

 

そして、どこをゴールとして、何を伝えようとして俳優を目指すのかを。

 

まず、そこを考えることが「オーディションを受けること」と同じぐらい大事なことなんだと。

 

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